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「!?……どうしてそんな事を訊くんだ、アリス?」
答えようとするが、少し戸惑ってしまう。
特別ではあるが、やはりアリスと呼ばれることに慣れそうにない。
でも、今更止めて下さいとは言えない。
「昨日一ノ瀬さんが言っていた『偶然』っていう言葉。あの小説を読んだからじゃないかなと思って」
「……ああ。読んだことあるよ。柄に合わないだろ?笑っても良い」
まただ。
莉久に廊下へ連れていかれた時と同じ顔をしている。
悲しそうな顔。
今まで周りから恐れられ、近づいてくれる人が居なかったのだろう。
全て悪いのは相手側なのに。
「笑いません。あの……僕、分かりました」
「何が?」
「一ノ瀬さんが良い人だって」
ポケットに入れようとしていた手が止まった。
僕は一ノ瀬さんを放っておけない。
何故だか、僕が必要な気がするんだ。
「アリス」
今まで反らされていた目がようやく僕に向けられた。
「俺と付き合って欲しい」
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