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「礼は要らない。これからはむやみに突っ走るな」
「あ、はい……ごめんなさい」
いつから僕のことを見ていたのだろうか。
それに、一ノ瀬さんは僕の方を見てくれない。
ずっと僕に背を向けている。
「名前は?」
「僕ですか?有栖川春です」
僕の名前を聞いた一ノ瀬さんは肩をピクリと動かした。
「どうかしましたか?」
「いや。こんな偶然あるんだなって……」
「偶然?」
「何でもない。気にするな。……じゃあ」
一ノ瀬さんは最後の一言を呟くと、足早にその場を立ち去ろうとする。
「ありがとうございました!」
叫んだ僕に一ノ瀬さんは軽く手を振った。
結局顔は見れずじまい。
でも、あんなに綺麗な金髪だったらきっとすぐに見つけられる。
今度はきちんと顔を見てからお礼を言おうと思った。
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