藤堂 紅の恋愛正確ーー第1話ーー

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「藤堂 紅はやめておけ。藤堂 紅だけはやめておけ」 歌津川 悠斗は僕の質問に端的に答えると、ミートボールを口に運んだ。タレをたっぷり絡めたそれは、持つだけで粘り気のある様子が見て取れる。悠斗は垂れそうなそれを、舌を前に出して受け止めた。もぐもぐと、もぐもぐと。咀嚼を続ける。よくお弁当に入っているおかずであるだけに、見ているだけで味が容易に想像できた。僕は言葉の続きをまったのだが、しばらくしてもなんの反応も返ってこないので、こちらから続きを促す。 「だけは、ってどういうことさ」 悠斗が流すような視線を僕に向ける。たっぷりと味わい嚥下して、 「藤堂 紅は男嫌いで有名なんだ。知らないのか? 男子の間では有名な七人の内の一人だ」 「……なにが有名だって」 白飯を一口。今日のお弁当はふりかけがなかった。まあ、おかずがカレー風味だから、そのせいかもしれない。冷たいそれを咀嚼していると、だらしなく口を開けている悠斗が目に入った。 「お前……マジで言ってんの? ほんとにほんとに知らねえの?」 「だからなにが?」 悠斗は、はあ、と息を吐き、それから頭を振った。ダメだコイツ。そう言われているような態度だ。 「生徒会長、青海 泉沙をはじめとする七大美少女の噂だよ」 「生徒会長の……噂?」 「生徒会長だけじゃないけどな」辺りを疑うように周りを見渡す。そんなことしなくても、みんなはおしゃべりに夢中になってるから問題ないはずなのに。むしろ、そうやっているほうが目立ちそうだ。 「青海 泉沙。上舞 関奈。天ヶ崎 咲葉。薮三 千。絶島 春丘。美井間 星優。そして藤堂 紅。学園七大美女にして攻略不可能と言われている七人だ。これまで何人もの猛者共が彼女らを手中に収めようとしてきたが、ことごとく失敗。見るも無残な姿になって帰ってきたよ」 「…………へえ」 いろいろつっかかりがあったのだが、悠斗の目が遠くを見てしまっているので聞けない。きっとその”無残な姿”を思い返しているのだろう。いかに手厳しくフられたのか、見ていなくても前にいる友人の目を見るだけで想像できそうだ。
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