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攻略不可の七人の噂。そんなことは初めて聞いた……のではないのだろう。こういう噂話が大好きな悠斗のことだ。きっと何回か僕に話したことはあるはず。単に僕が聴いていなかっただけで。名前を聞いても少しも脳内に引っ掛からなかったのは、完全に右から左に抜けてしまったからだ。
藤堂 紅は男嫌い。
さっきの悠斗の言葉も、その情報だけを残してあとはすっかり走り去ってしまった。他六人の名前なんて欠片も残ってはいなかった。
「まあ、とりあえずサンキュ。参考にさせてもらうよ」
「ん? お、おう。というか、お前さ」
「うん?」
「なんでいきなり『藤堂 紅ってどんな奴だ?』なんて訊いてきたんだ?」
それは、と口ごもる。話したくても、僕がなぜかわかっていないのだから仕方が無い。なぜそんなことを訊いたのか。なぜ悠斗に訊いたのか。なぜ藤堂 紅なのか。
答えの当たりはつけていたけれど、それを確信とするには早すぎる決断だった。
「僕も男だからね。可愛い女の子には多少興味がわくものなのさ」
「登喜」
「ん?」
「お前も大人になったなあ」
ん?
「小中とまったく女に、というか他人に興味を持たなかったお前が、高校に入ってようやく……。よし? 今日は俺が赤飯を奢ってやる?」
「ちょ、ちょっと待て。まてまてまて。さっきからお前の発言にはツッコミどころが多すぎてだな」
「明日にはもっと女のことがわかるような参考書を山ほど持ってきてーー」
「あーー、もう僕お腹いっぱいだ。残りの弁当食っていいから。それじゃな!」
「あ! 待てよ、登喜。和良屋 登喜?」
僕の名前を叫ぶ悠斗の声を無視し、教室を出る。あーもう、恥ずかしいんだよ、まったく。
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