藤堂 紅の恋愛正確ーー第1話ーー

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昼休みが終わって、予鈴がなり、しばらくしてから教室へ戻る。そうでもしないとまた悠斗がいらんお節介を焼いてきそうだ。先生が入るギリギリまで待った。 僕が入って、悠斗が僕に気づいて、手を振ったとき「起立」と日直の号令。ナイスタイミング。 悠斗は舌打ちをすると自分の席に戻っていった。悪いな、悠斗。でも、お前のアドバイスは僕向きじゃないんだよ。 椅子を引く音に混じって僕も席へ。机の前に立つと、紙が一枚、置かれていた。ノートだ。ノートが一枚、破られて置かれている。 誰のだろう。ふと悠斗をみると、やはり犯人は悠斗だったようだ。手のひらを上に向け、ひっくり返す。また上に向け、そしてひっくり返す。どうやら紙をめくれというとこらしい。 ひっくり返すと、ノートには悠斗の文字でこう書かれていた。 で、藤堂 紅とはどこで接点を持ったんだ? 「接点……か」 僕はルーズリーフを一枚取り出し、返事を書く。 藤堂 紅は他クラスの女子だ。他クラスの女子というのは、他クラスの男子からみるとほんと関わりがない。名前すら知らない子だっている。部活は生徒会などをやっていれば別だが、そういうのをやっていないとクラスの中だけが僕の世界なのだ。 実に狭い。 狭いが、広げる気力も必要性も見られない。 そんな中、僕が藤堂 紅と関わりを持ったのは、選択の美術の時間だった。 芸術という授業科目で、美術や音楽といった芸術科目から一つ選んで受講するスタイル。僕は美術を選び、藤堂さんも美術を選んでいた。 ただそれだけのこと。 週に一回。教室を移動し、授業を受ける。美術の歴史を学ぶこともあれば実際に描いてみるときもあった。 人物像。肖像画。 二人一組になってお互いを描く。デッサンというやつだ。そのペアを組む相手が、藤堂さんだった。 きっけけは、それだけのこと。 僕はそれまで、ジロジロを女の子を眺めたことはなかった。藤堂さんが初めてだった。 モデルに置いて、わかった。
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