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昼休みが終わって、予鈴がなり、しばらくしてから教室へ戻る。そうでもしないとまた悠斗がいらんお節介を焼いてきそうだ。先生が入るギリギリまで待った。
僕が入って、悠斗が僕に気づいて、手を振ったとき「起立」と日直の号令。ナイスタイミング。
悠斗は舌打ちをすると自分の席に戻っていった。悪いな、悠斗。でも、お前のアドバイスは僕向きじゃないんだよ。
椅子を引く音に混じって僕も席へ。机の前に立つと、紙が一枚、置かれていた。ノートだ。ノートが一枚、破られて置かれている。
誰のだろう。ふと悠斗をみると、やはり犯人は悠斗だったようだ。手のひらを上に向け、ひっくり返す。また上に向け、そしてひっくり返す。どうやら紙をめくれというとこらしい。
ひっくり返すと、ノートには悠斗の文字でこう書かれていた。
で、藤堂 紅とはどこで接点を持ったんだ?
「接点……か」
僕はルーズリーフを一枚取り出し、返事を書く。
藤堂 紅は他クラスの女子だ。他クラスの女子というのは、他クラスの男子からみるとほんと関わりがない。名前すら知らない子だっている。部活は生徒会などをやっていれば別だが、そういうのをやっていないとクラスの中だけが僕の世界なのだ。
実に狭い。
狭いが、広げる気力も必要性も見られない。
そんな中、僕が藤堂 紅と関わりを持ったのは、選択の美術の時間だった。
芸術という授業科目で、美術や音楽といった芸術科目から一つ選んで受講するスタイル。僕は美術を選び、藤堂さんも美術を選んでいた。
ただそれだけのこと。
週に一回。教室を移動し、授業を受ける。美術の歴史を学ぶこともあれば実際に描いてみるときもあった。
人物像。肖像画。
二人一組になってお互いを描く。デッサンというやつだ。そのペアを組む相手が、藤堂さんだった。
きっけけは、それだけのこと。
僕はそれまで、ジロジロを女の子を眺めたことはなかった。藤堂さんが初めてだった。
モデルに置いて、わかった。
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