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ルーズリーフに書いていて、ふとペンが止まる。
僕は彼女のどこに惹かれたのだろう。顔か?
藤堂 紅。ペアを組むときなって始めて名前を知ったぐらいだ。性格なんて知らなかったし、知っていることはなかった。
僕が始めて気になった箇所は……。
「……そうだ。姿勢だ」
椅子に座った姿勢。モデルになり、座っている姿。どこも見ていない目。軽く膝の上で組まれた手。伸ばされた背筋。
見られているのに、そのことをまったく気にかけていない、その姿。
見られ慣れているのではない。それでも、抵抗はまったくない。
描かれていると思っていないようだった。それこそ昼休み、二人で会話をしているような。
いや、ちょっと違うな。もっと興味がない。
電車で対面に座ったときのような、そんな感じ。
そんな彼女を見て、人形のように生を感じさせない彼女を見て、興味を持ったのだ。
藤堂 紅ってどんなやつなんだろうか。
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