第1話

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11月3日 某時刻 地方裁判所第4法廷被告人控え室 ううん……緊張するなぁ…… 「大丈夫かい?オドロキくん」 「あ、ナルホドさん……。も、もちろんですよ!王泥喜法介は大丈夫です!!」 「そう、顔が青ざめてるように見えたからね」 うう…… おれの名前は王泥喜法介(おどろき ほうすけ)。新米だが弁護士だ。 おれの目の前にいるのは成歩堂龍一(なるほどう りゅういち)さん。昔は伝説と言われるほどの凄腕の弁護士だったんだ。けど、ある事件に巻き込まれて弁護士資格を剥奪。今は『成歩堂なんでも事務所』のタレントでピアニスト、ということになっている。 「おどろきましたよ。昨日いきなり電話で『弁護をたのむ』、て言われたときは」 「すまないね。本来ならあいつは僕が弁護をしたいところだ。けど、僕にはバッジがないからね。だから一番信頼できる弁護士に頼みたかったんだ」 「えっ?」 一番……信頼できる…… 「ナルホドさん、それって……」 「ああ、オドロキくんなら安く弁護をしてくれる、て信じてたからね」 ……聞くんじゃなかったな…… ナルホドとオドロキが話していると急に大声が聞こえた。 『もうだめだぁ!有罪だぁ!!』 「依頼人……あんなこと謂ってますけど……」 「懐かしいなぁ。新人の頃を思い出すよ」 「依頼人、矢張さんでしたっけ?ナルホドさんの古くからの友人だって言ってましたよね」 『もうだめだぁ!おれは死ぬんだぁ!!』 「そうだよ。僕の初めての依頼人も矢張でね。あんな風に騒いでたよ」 「おい成歩堂!!おまえなんで弁護士やめたんだよ!!これじゃ……これじゃ……俺が有罪になっちまうだろぉぉ!!!」 そういうことは俺のいないところで言って欲しかったな…… ガチャっ 「被告人、弁護人まもなく開廷です。法廷の方に……」 係官が呼びにきた。とうとう裁判が始まる。 被告人はナルホドさんの友人だ。どんな理由であれその人の弁護を俺に任せたことにはかわりない。 絶対に負けられない。 「オドロキくん」 「は、はい!」
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