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突然、ナナコ先輩の温かな腕が私を包み込んだ。
「………先輩?」
「もういい……もういいよ!アンタが辛かったこと…よく分かったから…!
………アンタが、死ぬほど辛い思いしたの…よく分かったから…。」
ナナコ先輩の声は、震えていた。
鼻をすすり、抱き締める腕と肩は小刻みに揺れる。
「………アンタ、そんな風に思って毎日過ごしていたの…?自分で自分を追い込んでいる…傷ついた自分を更に傷つける。
そんなの…幸せになれるハズないじゃないっ…!
アンタ、馬鹿ね…!
誰だって幸せになる権利がある、愛し愛される権利がある!
そんなの当たり前でしょ?
確かに、誰かを好きになって裏切られるのは怖い…。
だけど、愛を信じなきゃ…また誰かを愛することで自分自身も幸せになれるでしょ…!」
「せん…ぱ…。
だけど、だけど私…。」
「自分が世界一不幸だなんて思わないで。そんなことない、そんなハズないもの。
しんどくても…辛くても…全部嫌になって死にたくなっちゃっても、それでもまた誰かを好きになる。
ある日突然世界が無くなっても、それでも誰かを愛する。
………馬鹿ね、誰かを好きになるのは当たり前なんだから。
拒絶したり、怖がったりしないで……。
アンタ一人じゃないよ。
私だって…ついてるんだから。」
目頭が、熱くなった。
そして。
一筋流れた涙は、淀みなく溢れだした。
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