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足を止め、くるりと振り向いた。
吉井は私にぶつかりそうになり、慌ててブレーキを踏んだ。
突然振り向いたもので、吉井のヤツは目を丸くして驚いていた。
「わわっ…!どうしたんですか急に…!?」
「………。」
彼の顔をじっと覗き込むように見つめた。
彼は…彼は本当に…。
「ユイさん…?」
ねぇ、私のこと好きなの?
なんて…馬鹿なことは訊かないでおこう。
本人が直接私に言うまでは。
まだまだ、分からないことだらけだし。
あの噂も本当かどうか怪しいものだし。
飲み会で抱きつかれたからって、好きになったりなんか…。
「ふふっ。」
私は思わず笑ってしまった。
なんだか、温かい。
胸の中で、カエルがぴょこんと跳ねたような気がした。
「ユイさん…あの……俺っ!」
「早く行こ!」
彼の言葉を遮るように踵を返して歩き出す私。
ああ、私。
愛されてる…。
いや、違うだろ。
『愛してる』
〈完〉
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