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一度死んだ私の心は、何も感じることはない。
誰に口説かれても……抱かれたとしてもだ。
「ユイ…。」
夕陽が溶け込む夕方5時。
終業の時刻が過ぎたのも忘れ、一室でボーッとしていた私にナナコ先輩が声をかけた。
辺りを見渡せば、私と先輩以外は全員いなかった。
夕陽に照らされたナナコ先輩の顔は申し訳なさそうに俯いていた。
「あの…さっきは…ゴメン。
アンタにしつこく言い過ぎたね。」
「………いいえ、大丈夫です。」
先輩は手に持っていた缶コーヒーを差し出した。
私はありがとうございますと頭を下げると、まだ温かい缶コーヒーを受け取った。
「………アンタのこと、心配して強く言っちゃったけど、悪かったわ。
アンタの事情、何も知らないのに。」
「…………。」
それもそうだろう。
私は先輩に何一つ話してないのだから。
「詮索するつもりはないの。
ただ、アンタがそこまで男を寄せ付けないのって…理由があるんでしょ?
話したら、楽になるんじゃない?」
話すつもりなどない……。
だけど。
色々考えてしまう最近の私は限界だった。
愛と幸せを遠ざけながらも、どこかで酷く求めてしまっている自分に気付いたからだ。
先輩に話したところで解決するはずもない。
だが…。
私はもうこの矛盾した気持ちを抱えておけなかった。
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