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お、お嬢の足音が聞こえる。 もう作り終わったのか。 エプロンをつけたままのお嬢は静かに扉を開けて、そぅっとカインの顔を覗き見てる。 「……愛、良?」 「起きれる?」 「ん……」 擦れた声を出すカインが起きているのを確認するなり、お嬢はカインの体を起こして背中と壁の間に枕を挟んだ。 さらには手元が覚束ないカインのために、水を飲ましてやったり、お嬢の手作りうどんを食べさせてやったりと、甲斐甲斐しく世話をしている。 し・か・も! 5分以上だ! イケメンには5分以上優しくできないお嬢がだ! ……まぁ、5分毎に一回カインから離れているけどな。 そんでもって、創造で出したと思われるピンクのウサギの人形を深呼吸しながら捻りつぶしているけど。 殴らないだけマシか? お嬢の力で殴ったら、轟音を立てて壁まで粉々だろうからな。 「はい、おしまい。ほら、横になって寝る」 「ん……」 うどんを食わせ終わったら、さっさとカインを寝させて洗い物を持って離れようとしたお嬢。 そのお嬢のエプロンの裾を、無意識に掴んでいるカイン。 ぐはっ……。 どこのラブコメだよ! リア充滅べ!! 「……コス王」 カインの手を振りほどかずに、視線はばっちしこちらのお嬢に呼ばれました。 というか、最初から気づかれてた? 「覗きばっかで嫌になるわー。相手すんのも面倒だから洗い物よろしく」 「……へ?」 人型になれば押し付けられた洗い物、訳が分からず部屋を追い出される俺様。 外の廊下にいたギルマス+α(筋肉マッチョ達)と目があった。 それぞれに『カインを暖かく見守ろう会』と名前の入ったタスキを身に着けている。 これ……見守ろう会じゃなくて、覗こう会じゃね? 俺様は何も見なかったことにして、洗い物に行きました。 お嬢の看病が効いたのか、カインも次の日には元気になってたぜ!
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