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「キリク!キリク早く!」
「待て、アリシア!急に走ったら転ぶ―…」
「きゃっ!」
小さな少女は美しい花たちが植えられた庭で転んだ。その様子を見て後ろから小さな少年が慌てて少女を起こす。
「アリシア!大丈夫か!?」
「大丈夫!」
少年―キリクが心配するのにも関わらず、少女―アリシアは楽しいとでも言うように笑った。
風が吹いてアリシアの琥珀色の長い髪と白いワンピースの裾が大きく揺れる。キリクも風でなびいた琥珀色の髪をおさえた。
「急がなくても、城下の祭りは終わらない。明日まであると叔父上がおっしゃっていた。」
キリクは苦笑いしてアリシアの手をとって歩き出した。アリシアは繋いだ手をぶんぶんと振る。
「だって、早くシエルたちと遊びたいもん。」
「シエルは、午後からシエルの母上様と出向くらしいから、昼食を食べてから行こう。」
「うん!」
アリシアは嬉しそうにそう返事をした。そこに通りかかったメイド二人が微笑ましい光景を眺めて笑い合う。
「アリシア様とキリク様は本当に仲が良くて微笑ましいわね。城下町に下りて同年代の子と遊んだりしてとても楽しそうよ。」
「ええ。幼い時はあの事件でどうお育ちになってしまうのかと心配したけれど。オリヴィア様に似てらっしゃって良かったわ―」
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