第一章

5/9
前へ
/54ページ
次へ
「…そのまま帰られては困ります。」 キリクは真っ向からスウィレラ国王を睨むように見つめた。ついとスウィレラ国王は振り返る。 「…あなたの申し出を受けます。」 キリクに続いて、アリシアも口を開く。 「エアルト国には手を出させない。 」 「…ふっ、それは良かった。では、調教師はお二人のお部屋に待機させてもらいます。」 クスリと可笑しそうにスウィレラ国王は笑って、今度こそ宮殿を出ていった。 「キリク…アリシア…。お前たち、大丈夫なのか?」 エアルト国王はおそるおそるキリクに尋ねる。キリクとアリシアは国王を振り返り、真剣な目で自分の叔父を見上げる。 「わたしはこの国が大好きなの。叔母上も叔父上も、この城に仕えてる人たちも城下の人たちも全部。」 「エアルト国を守る。それが、母上の願いだったのです。それを私が叶えてみせます。」 二人は豊かな笑顔でそう宣言した。国王と王妃はただただ、彼女と彼の笑顔に涙ぐむばかりだった。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加