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「…痛っ!やっぱりしみる…。」
「アリシア様…なぜこんなにキズをつけられるのですか?」
その日の夕刻、アリシアは世話係のロゼッタに消毒液を塗ってもらいながらも痛みに顔をしかめた。
「……あのね、あの男が連れてきた調教師が鞭を持ってるの。解答を間違うとぴしりと打つの。」
アリシアは表情を変えずにうわ言のようにロゼッタに話して聞かせた。その話にロゼッタは息を飲む。
「それは体罰ではないですか!いくら、アリシア様とキリク様の父上といえどひどい―「…父上じゃない。」
アリシアはロゼッタの言葉を遮る。
「あたしに父上はいないの。叔母上と叔父上とキリクがいれば十分幸せ。」
「アリシア様…。」
アリシアがすっと片隅の小さいテーブルの上に載っている写真を眺めた。その写真には若き頃の国王と王妃、オリヴィアと小さなアリシアとキリクが楽しそうに笑っていた。
「キリクだって頑張ってるんだから、あたしも頑張る。キズだらけだって泣かない。」
「…アリシア様、どうかご無理をなさらずに。」
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