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「いつもありがとうございます」
仕事が終わったノースは、調理場の裏手に来ていた。抱えるほど大きな布袋を受け取り、ノースは頭を下げる。布袋の中には調理場で出た廃棄食材が入っていた。人気店だけあって廃棄食材の量も多い。
ノースは毎日の食事をこの廃棄食材だけで賄っており、仕事を辞めさせられるのはノースにとって死活問題だった。
「ああ、あとこれ頼みたいんだが」
ノースに袋を渡したコックが、手紙とパンを渡してくる。ノースはそれを受け取った。
「誰宛てですか?」
「ミレーナの館のハンナちゃんに」
パンを袋にしまい、手紙は上着の内ポケットに入れる。
ノースは個人で配達の仕事をしていた。こちらの報酬は現物が多い。始めは移動のついでに頼まれた手紙等を運んでいただけで、ノースはついでの事にお金は貰えないと断っていた。すると、頼んできた相手がお礼として物をくれるようになったのだ。
今では現物報酬の配達屋として見られている。この方が相手も頼みやすいらしく、評判も良いのでそのままにしている。
「帰り道で寄れるので、このまま渡しに行きます」
「ああ、よろしく頼むよ」
ミレーナの館に向かうべく、ノースは歩き出した。ミレーナの館に寄ると帰るのが少し遅くなるが、パンは廃棄食材ではなかなか出ないので、ノースにとっては嬉しい依頼だった。
この手紙を届けたら、家に着くのは夜中過ぎになるだろう。明日、いや既に今日になってしまったが、朝から仕事が入っている。仕事場は家から二時間はかかる距離だ。遅刻しないように家を出るには、あまり寝られない。
そんな事を考えながら歩いていると、ノースは壁に貼り紙がしてあるのに気が付いた。横一列に大量の紙が長々と貼り付けてある。
こんなに目立つ貼り方は珍しく、ノースは近寄って、歩きながら流し読みをしてみた。暗かったので、文字の大きな部分しか読めない。
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