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 玉座まで続いていた長い階段を、ノースは転げ落ちた。電撃による衝撃のせいで受け身を取る事も出来ない。  階段を最後の段まで転がったノースに、起き上がる力は残っていなかった。背中を打った反動で咳が出て、大量の血をともに吐き出す。  こんなはずではなかった。  こんな無様な死に方をする為にここに来たのではなかったのに。  ノースには目的があった。  魔王に殺されるという目的が。  魔王討伐には褒賞金とは別に、弔慰金が出ていた。  魔王と戦って敗れた者は、見せしめとして城に送られてくる。そうやって送られてきた者は、魔王に少なからず報いたとして弔慰金が家族に支払われた。それは、借金を全額返済しても、マリアが一生を暮らすのに十分な金額だった。  もう先がないと感じたノースは、マリアだけでも幸せになってほしいと願い、ここまでやってきたのだ。  だが、これでは金が貰えない。  自分の不運を呪い、脳裏をよぎるマリアにノースは詫びた。 「ご、めん。マリア……」  誰にも届くことのない声が、広い部屋に虚しく消えていく。 「死に、た……くない……」  力なく瞼は閉ざされ、ノースの頬を涙が伝った。
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