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今のノースは魔王の力によって命を繋げている。
魔王城で死にかけていた時、マリアを幸せにするまでは死ねないと思い、ノースはこの魔王と契約を結んだ。対価を必要とする契約だったが、マリアの為なら何を犠牲にしてもかまわないと思った。
しかし、魔王はその代償にマリアを求めたのだ。
「命を与えてやったんだ。お前にとって命と等しいものと引き換えに決まってんだろ。他に何かあればそちらと引き換えてやってもいいが、お前に命と同価値の物がマリア以外にあるのか?」
その言葉にノースは押し黙る。自分の命を懸けてマリアを救いたかったのだ。マリアの他に大切なものなどない。
「今さら契約の破棄は出来ない。それに、俺は約束を守っただけだ」
そう言われれば、ノースに言い返す事は出来なかった。
「ほらマリア。これを皆で食べるのだろう?」
黙ったノースを無視して、魔王は両手に持っていたバスケットを軽く持ち上げ、マリアに笑いかける。
すると、マリアがノースの腕の中で暴れ出した。下ろしてほしいらしい。
ノースがマリアを下ろすと、マリアはすぐに魔王に近寄った。バスケットのフタを開け、中から大きな布を取り出す。
小さな身体で、マリアは必死に布を地面に広げ始めた。
「手伝うよ」
ノースはマリアの反対側の布を掴み、二人でキレイに広げる。その上に魔王がバスケットを置いた。
靴を脱いで布の上に乗ったマリアは、急いでバスケットまで行き、中から何かを取り出した。それを持ってノースのそばに戻る。
マリアは取り出した物をノースに差し出した。
「ありがとう、マリア」
ノースは紙に包まれた何かを、マリアから受け取る。紙を取ると、中からサンドイッチが出てきた。
「マリアが作ってくれたのか?」
マリアは頷き、じっとノースを見る。ノースが食べるのを待っているようだ。そんなマリアを見て、ノースはサンドイッチにかぶりつく。
「うん、おいしい」
サンドイッチの中身は、ノースが好きな卵だった。パンがなかなか手に入らなかったからサンドイッチはたまにしか食べられなかった。なのに、マリアはノースの好みを覚えていてくれたようだ。
その事が嬉しくて、ノースは笑顔でマリアの頭を撫でる。心なしかマリアが笑ったように見えた。
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