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「おい、ノース!」  誰かの呼ぶ声にノースはハッとする。 「ぼーっとしてんじゃねえ! さっさと手を動かせ!」 「はい!」  慌てて返事を返し、足元にある樽を担ぐ。  ここは街の港。ノースはそこで、船からの荷物を運ぶ仕事をしていた。  辺りは怒号が飛び交い、着いたばかりの荷物を、ノースより一回りも二回りも大きい屈強な男達が次々と運ぶ。  最近、目眩の回数が増えた。  担いだ樽を何棟も並ぶ倉庫の入口の前に下ろし、ノースは接岸している船の近くにある荷置場に走って戻る。また樽を担ぎ、同じ倉庫の前に運ぶ。  港の荷運びの仕事は、他の日雇いに比べ賃金が良い。力仕事だからという理由もあるが、高価な荷を運ぶ時の為に、高い賃金で信用のある者を雇っていた。賃金が良い仕事はそれだけ人気もある。小さい頃から様々な場所で働いていたおかげで、ノースはこの仕事を紹介してもらう事が出来た。しかし、代わりはいくらでもいる。役立たずならクビだ。  休んでいる場合じゃない。  ノースは疲れている身体に鞭打ち、荷運びの仕事を続けた。
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