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 太陽は傾き、街の街灯に火が入り始める。ノースは港の仕事を終わらせ、次の仕事場にいた。酒場のホールでの給仕の仕事で、街で人気の酒場は多くの人々で賑わっていた。 「酒を追加で。あとは……」  客がオーダーを入れる。料理を載せた丸いトレイを両手に持ち、ノースは客の注文が終わるまで待っていた。 「そういえば知っているか?」  同じテーブルの男が注文中の男に話しかける。 「また魔王討伐が失敗したらしいぞ」 「ああ、知っている。あとアゴヤの煮付けと」  男は話を聞きつつ、注文を続ける。 「でさ、今回はかなり金をかけていたせいで、しばらくは討伐隊を出せないらしい」 「ふーん。デゴのたたきと」 「期待はあまりしてなかったが、こうも情けない結果を出されちまうとなあ」 「俺らには関係ないだろ。ドドルドのサラダ」 「まあ、待て。関係あるのはここからだ。しばらく討伐隊が出せない代わりに、魔王討伐の募集をかけるんだと」 「募集?」  注文の為にメニューから顔を上げなかった男が、やっと喋っていた男に顔を向けた。 「隊を組む金がないから募集をかけてそいつらに討伐させようってわけだ。で、討伐が出来たらそうとうな金が出るらしい」 「ははーん。関係あるってのは討伐に行って一稼ぎしようって事か。バカバカしい。俺らに倒せるわけがないだろう。あとはミミンの丸焼きだな。これで頼む」  男はメニューを閉じた。 「はい」  ノースは男に返事をして、やっと離れられると心の中で安堵した。これ以上ここにいたら、料理が冷めてしまう。まだ話している男達のテーブルから離れ、ノースは持っていた料理を注文していた客のテーブルに運んだ。
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