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 他のテーブルの注文も取りつつ料理を全て運び終わったノースは、新たな注文を伝えようと調理場へ向かった。が、その途中でくらりと目眩を感じ、思わず壁に手をついた。 「ちょっと、ノース。大丈夫かい?」  近くにいた店の女将さんが、ノースを心配して声をかける。 「はい、大丈夫です。すみません」 「あんまり無理するんじゃないよ」 「はい、すみません」  ノースは慌てて壁から離れた。  使えない奴だと思われたくない。 「そんな必死にならなくともクビ切りゃしないよ」 「すみません」  ノースの態度に女将さんはため息を吐いた。 「もういいから。調理場に注文を知らせておいで」 「はい」  女将さんに頭を下げてから、ノースは急いで調理場に向かった。調理場で注文を伝え、出来上がった料理をまた運ぶ。それからはいつも以上に気を付けて仕事をした。へまをしてクビになるわけにはいかない。人気店で賃金がいい事も辞めたくない理由ではあるが、ノースにとってはこの店で働く重要な理由がもう一つあった。
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