第1話

2/2
前へ
/2ページ
次へ
 人気(ひとけ)の少ない道に、雪がやわらかく降り積もっていた。 その道を彼女は―ユバタカオリは急ぎ足で通り過ぎていった。 大学に入ってから会っていなかった友人と約束をしていたからだ。  しばらくすると、電車の踏み切りの音が聞こえてきた。   そこを渡れば待ち合わせの場所に着く。 ―今何時かな― そう思い、彼女は時計を見ようと腕をまくった。しかし、意識はすぐ 別のところに移った。 そこには、いつもだったら見える白い肌はなかった。代わりに、青紫 色に変色した肌が見えていた。 「……何で?」彼女のそんな疑問はすぐに吹き飛んだ。その変色した 部分が、少しずつ周りに侵食し始めていたからだ。 「きっ……きゃああああああああああああああああああああああ!!」 彼女は叫んだ。そうしている間にも、侵食は続いていった。 「どうした?何かあったのか?」近くを通りかかった男の人が、彼女に 駆け寄っていった。そして息を呑んだ。 「何だぁ…こりゃぁ…」彼はその場に立ち尽くした。すると、今度は 彼女の体にこぶができ始めた。 「え?え?何これ?え?何が起きてるの?どうなっちゃうの?ねぇ!」 「わからん。いま救急車を……」彼はかばんから携帯電話を取り出し た。 「ねぇ、助けて!私を助けて!ねぇ!私を――」 彼女の言葉は最後まで続かなかった。全身のこぶが破裂。いたるとこ ろから血が噴出し、あたりの雪をピンク色に染めた。 「何…で…私…ガ…マダ…死ニ…タクナ…イ」 ユバタカオリは地面を這いずり回り、やがて事切れた。 いつもより少し強い風が吹いた。まるで、彼女の死を喜んでいるかの ように、彼には思えた。 そして彼自身も、恐怖と混乱で気絶した。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加