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人気(ひとけ)の少ない道に、雪がやわらかく降り積もっていた。
その道を彼女は―ユバタカオリは急ぎ足で通り過ぎていった。
大学に入ってから会っていなかった友人と約束をしていたからだ。
しばらくすると、電車の踏み切りの音が聞こえてきた。
そこを渡れば待ち合わせの場所に着く。
―今何時かな―
そう思い、彼女は時計を見ようと腕をまくった。しかし、意識はすぐ
別のところに移った。
そこには、いつもだったら見える白い肌はなかった。代わりに、青紫
色に変色した肌が見えていた。
「……何で?」彼女のそんな疑問はすぐに吹き飛んだ。その変色した
部分が、少しずつ周りに侵食し始めていたからだ。
「きっ……きゃああああああああああああああああああああああ!!」
彼女は叫んだ。そうしている間にも、侵食は続いていった。
「どうした?何かあったのか?」近くを通りかかった男の人が、彼女に
駆け寄っていった。そして息を呑んだ。
「何だぁ…こりゃぁ…」彼はその場に立ち尽くした。すると、今度は
彼女の体にこぶができ始めた。
「え?え?何これ?え?何が起きてるの?どうなっちゃうの?ねぇ!」
「わからん。いま救急車を……」彼はかばんから携帯電話を取り出し
た。
「ねぇ、助けて!私を助けて!ねぇ!私を――」
彼女の言葉は最後まで続かなかった。全身のこぶが破裂。いたるとこ
ろから血が噴出し、あたりの雪をピンク色に染めた。
「何…で…私…ガ…マダ…死ニ…タクナ…イ」
ユバタカオリは地面を這いずり回り、やがて事切れた。
いつもより少し強い風が吹いた。まるで、彼女の死を喜んでいるかの
ように、彼には思えた。
そして彼自身も、恐怖と混乱で気絶した。
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