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そして今日も美紀と一緒にあの土手からグランドを見下ろす。
昨日までは私も光に重なる向井くんの影を追ってたけど…
もうあの事は忘れようって決めたから、朔也くんの姿を目で追った。
じっと見てると朔也くんはこのチームの一番のストライカーなんだなと知る。
みんなが自然と朔也くんにボールを集めて行く。
チームの仲間みんなが朔也くんを頼りにしてるのを見てると、やっぱり朔也くんは素敵な人なんだなと痛感した。
「あ、向井くん休憩みたいだから行って来るね」
ポールをフェンスに立てかけてタオルを肩にかけ水道の方へ歩いて行く向井くんを追って美紀が走って行った。
水道で顔を洗ってる向井くんの隣で楽しそうに話してる美紀の姿になんとなくホッとしていると、
タオルで顔を拭きながら、ふいに感じた向井くんの視線に何故か私の胸がズキンと疼いた。
…なんで…?
そんな悲しそうな目で私を見るの…?
慌てて視線を逸らして俯いた。
…解らない…
あの人の考えてる事が全然解らない。
あんなに美紀と楽しそうに笑ってるくせに…
なんで私にそんな視線を送るのか…
キスしたら好きになれる…?
それを確かめてあなたはどう思ったの…?
…私は…
一瞬あなたに恋をした…気がした。
だけど…それはきっと勘違いだ。
頭をプルプルと横に振って、再び視線をグランドに向けると、目の前にはニカっと笑った朔也くん。
「やっと休憩だよ。
さっきのゴール見ててくれた?」
「う…うん!
朔也くんすごいカッコ良かった」
少し照れながら言った私に、朔也くんは
「よし!これで一歩前進だな」
って笑いながら私の隣に腰かけた。
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