心の在り処

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「だけど美月ちゃんさ… ホントはここから毎日一輝を見てたでしょ」 突然朔也くんから放たれた言葉に私は狼狽えた。 「えっ…ち…違う…」 「気づいてたんだよ。 俺、ずっと美月ちゃん見てたから」 私の言葉を遮って言った朔也くんは、ニカっとあの人懐っこい笑顔で微笑む。 「アイツに…何かされた?」 「えっ…?」 「一輝はさ、キス魔だから」 「へっ?」 ますます慌てた私を見つめて朔也くんはフフッと笑った。 「アイツさ、俺に彼女が出来ると必ず聞くんだよね。 女の子とキスしたら、その子の事、好きになれるの?って。 最初に聞かれた時は、何言ってんだコイツって思ったけど… 普通はその子が好きだからキスしたくなるモンでしょ? だけどアイツは俺とは違うんだよね。 自分に興味持ってくれる子には、気持ちがなくてもキスをする。 これは俺の勝手な憶測だけど… それで探してるんだと思うよ。 自分にとってのシンデレラをね。 アイツの家庭って結構複雑だったりするからさ… ちょっと捻くれてるって言うか… 普通の感覚と違う所を持ってたりするんだ」 美紀と楽しそうに話してる向井くんをじっと見つめながら言う朔也くんに私の胸がズキズキと痛む。 「だけど…もし美月ちゃんが アイツにキスされてたとしても… それはアイツにとってはシンデレラを探すためにガラスの靴を履かせて見ただけの事で それ以上の深い意味なんかないと思う。 だから… もうアイツとの間に起きた事なんて忘れて欲しいんだ。 って言うか、俺が絶対忘れさせてみせるから」 さっきとは違う真剣な表情で言う朔也くんに私の心がグラグラと揺れた。 「朔也くん…私…」 「うん?」 優しく微笑んだ朔也くんをじっと見つめながら私は言った。 「もう朔也くんが好きなんだと思う」 その思いに嘘なんかなかった。 私は…優しく微笑んでくれる目の前のこの人を大切にしようって思ったんだ。
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