1112人が本棚に入れています
本棚に追加
試合開始のホイッスルが鳴って、弾かれたボールを追って駆け出す朔也の姿をじっと見つめる。
前半から自然と朔也にボールが集まって何度もゴールを狙って蹴り出して行くけどしっかりガードされてるせいかなかなか決まらない。
だけど前半の残り5分の所で、朔也に纏わりついてたガードが一瞬外れた瞬間、一気にボールを蹴りながらゴールへと向かっていく朔也。
そのまま勢い良く蹴り出されたボールがキーパーの反対側を突き抜けて行った。
「やった!」
思わず美紀と手を合わせて喜ぶ。
チラっと私の方を見た朔也が、Vサインをして見せた。
…ご褒美1回決定だね。
心で呟きながら朔也に向かって微笑む私を、美紀がニヤニヤしながら見てる。
「美月もついにファーストキス決定か」
美紀の言った言葉が私の胸にズキッと突き刺さったけど、私はニコリと微笑んだ。
「あっ、向井くんだ」
美紀の言葉に視線を向けると少し東側のスタンド席で、じっと朔也の試合を見つめる向井くんの姿があった。
「なんか…ずいぶん厳しい顔してるね、向井くん…」
美紀に言われてじっと見てみると、向井くんの視線はボールを追う朔也に鋭く向けられているような気がした。
「午後から跳ぶからきっと今はストイックな状態なのかもね」
少し寂しそうに言う美紀は本当に向井くんを思ってるんだなと感じた。
「向井くん、いい記録出せるといいね」
微笑んで言った私に美紀も微笑んで頷いていた。
最初のコメントを投稿しよう!