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結局朔也の試合は後半、少しバテ気味になった敵チームのガードが崩れて
約束通り3本のゴールを決めた朔也の大活躍で2回戦進出が決まった。
「美月!ねぇ見ててくれた?」
試合を終えた朔也が嬉しそうに私に駆け寄って来る。
「うん!ホントに3本も決めちゃうんだもん…
すごいカッコ良かったよ」
「マジ?美月にそう言われると頑張った甲斐があるよ!
明日の2回戦も絶対勝つから!
あ、それとこの後どうするの?
美紀ちゃんも一緒じゃ午後の一輝の跳躍見てくんだろ?」
「うん、終わったらまたメールする」
「解った。
じゃ気をつけて帰れよ」
ポンポンと私の頭を叩いて微笑む朔也と私の姿をあの鋭い視線のまま向井くんが見つめてたなんてこの時の私は気づいてなかった…。
持参したお昼を美紀と一緒に食べて、午後からは陸上競技場へと移動する。
グランドには、美紀が言ったようにストイックな雰囲気を醸し出す向井くんの姿。
「…なんかさ…
さっき向井くんに頑張ってねって声かけたんだけど…
いつもの向井くんみたいに全然笑ってくれなくて…
なんか全然違う人みたいで怖かった…」
どことなく寂しそうに言う美紀の背中を私は優しく撫でた。
「向井くんの競技は一度の失敗で終わっちゃうんだし…
だからきっと跳躍の前は緊張してるんだよ。
インターハイ終わったらデートなんでしょ?
大丈夫だよ」
「うん…そうだよね!」
無理に笑顔を作る美紀が痛々しくて私の胸も苦しくなる。
やがて棒高跳びの選手が次々とバーを跳んで行き、向井くんの番になる。
最初のうちはいつも向井くんが跳んでるのよりずっと低いバーの位置だけに安心して見ていた。
相変わらず綺麗なフォームでバーを越えて行く姿をじっと見つめる。
「余裕だね、向井くん」
微笑んで言った私に美紀もニコリと微笑んで言った。
「うんそうだね。
昨年のインターハイで優勝したくらいだからね」
「えっ?そうなの?」
「うん、全日本でも3位だったんだって」
「そうなんだ…向井くんってスゴイんだね」
私の言葉に美紀は
「その上あんなカッコイイんだもん。
そりゃモテるよねぇ…」
ってやっぱり寂しそうに笑った。
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