心の在り処

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「じゃあ美紀、私は帰るけど… 向井くんの所に行くの?」 「…うん、一応声かけて来る」 「そっか…。じゃまたね」 結局… 向井くんは3本目を失敗。 もう一人の選手は成功…。 結果2年連続優勝を逃す事になってしまった。 あんなに練習頑張ってたのに… 呆然と立ち尽くしながらバーを見つめていた向井くんの姿に私も胸が激しく痛んだ。 だけど… 私には朔也がいる。 向井くんに慰めの言葉なんてかけてやれる立場じゃないし…。 駅へ向かって歩きながら、朔也にメールを入れた。 『今から帰るよ。 向井くん優勝出来なかった』 朔也からはすぐに返信が来て 『そっか… 一輝落ち込んでるんだろーな… まぁ美紀ちゃんが慰めてくれるから大丈夫だろ! 俺はチームみんなとグランドで練習してるから、気が向いたら帰りに寄ってけば?』 だけど何故か私は呆然としてた向井くんの姿が胸に焼き付いてて、テンションが下がってた。 『うん…でも今日はちょっと疲れたから真っ直ぐ帰る。 明日の試合も頑張って! また応援行くね!』 そう返信して、まっすぐに家に帰った。 部屋でぼーっとしていても、どうしても向井くんが気になる。 私はケータイを開いて美紀にメールをしてみた。 『美紀、今日はお疲れ! 向井くんと話せた?』 少ししてから美紀から返信が届く。 『ダメだった。 今日は、そっとしておいてって言われちゃった』 …そっか… そうだよね。 女に対しては心のない向井くんでも、あれだけ練習して来たのに結果を出せなくてきっと苦しんでる。 『きっと気持ちの整理がついたら連絡くれるよ。 それまでそっとしておいてあげた方がいいかもね』 美紀にそう送信した途端、私の携帯が鳴り出した。 画面には… 何故か向井くんの名前が表示されていて、私は慌てて携帯を落としそうになった。 …何で私にかけて来るの? 疑問と動揺を抱えながら私は恐る恐る着信のボタンを押した…。
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