心の在り処

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「も…もしもし…」 『ふはっ! 藍田さん何を警戒してんの?』 「い…いえ別に警戒してるワケでは…」 『今、朔也と一緒?』 「あっ、朔也ならグランドでみんなと練習してるけど」 『そう… じゃ一緒じゃないんだね。 って言うか、もうすっかり呼び捨ての仲なんだ』 何故か不愉快そうに聞こえた向井くんの声に私はビクビクしながら聞いた。 「……あの…何か用ですか?」 『うん… 今から少し会えないかなと思って』 「はっ?」 『藍田さんに聞いて欲しい事があるんだ』 「…電話じゃ話せないの?」 『うん。ちゃんと会って話したい…』 なんだか電話の向こうの向井くんの声が、やけに悲しそうに聞こえて私は断りにくく感じてしまった。 「じゃ…グランドの近くに公園があるの解る?」 『うん。滑り台のある公園でしょ?』 「そう、じゃそこで待っててくれる?」 『解った。無理言ってごめんね。 朔也には秘密にしておくから、美紀ちゃんにも秘密にしてね』 悪戯っぽく笑う向井くんに不信感を感じながらも私は電話を切って家を出た。 家から5分くらいの所にある公園。 いつも朔也と帰り際に座って話すベンチに腰掛ける向井くんの姿を見つけた。 「向井くん…」 私の呼びかけにニコリと微笑んだ向井くんが、自分の隣を指差してる。 「とりあえず座ってくれる?」 仕方なしに私はひとつため息をついてから隣に腰かけた。
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