心の在り処

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「…今日… 残念だったね… だけど…あれだけ練習頑張ってたんだもん。 来年のインターハイは絶対に全国に行けるって私は信じてるよ」 こんな事を言っても慰めになんかならないかもしれないけど… 隣で寂しそうに笑う向井くんに言葉をかけた。 「ははっ…藍田さんってホントお人よしなんだね。 だけどね、今日跳べなかったのは俺の実力があそこまでだったって事だよ。 慰めてくれてありがとね」 「…そんな事ないと思う… だって…向井くんはいつも練習で5m以上のバー跳んでたじゃない」 「練習で跳べても本番で跳べなかったら意味ないでしょ。 本番で結果を出せなかったら、今までして来た練習なんて全く価値がなくなるんだよ」 投げやりな言葉を吐く向井くんにイラッとする。 「…どうして…?」 「ん?何が?」 「どうしてそんな風にしか考えられないの? 美紀だって一生懸命向井くんを応援してたし、私だって一生懸命向井くんを応援したよ。 あんなに頑張って練習してる向井くんだから応援したいって思ったのに… 結果が出せなくったって、努力した事に価値がないなんて、そんな悲しい事言わないで!」 立ち上がって大声で言った私をポカンと眺めてた向井くんが、笑い出した。 「ふはははっ!藍田さんってやっぱり俺が思った通りの人だね」 そう言って笑いながら向井くんは立ち上がって、そのまま私を胸の中に包み込んだ。 …はっ? 呆然とする私の頭の上から向井くんの言葉が落ちて来る。 「俺…やっと見つけたって思ったのに… もう藍田さんは朔也の彼女なんだよね。 キスしたら… その人の事、好きになるってホント?って聞いたのはね… 俺の事、好きになって欲しかったからなのかも。 だけど朔也の気持ち考えたら、俺は藍田さんを奪うなんて出来ない。 朔也は俺の唯一の理解者だからね…」 慌てて向井くんの胸を両手で突き放そうと抵抗してみたけど、その手はすぐに向井くんに掴まれた。
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