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それは高校2年の夏の日の出来事だった。
学校帰りの川沿いの道。
家に帰るのには少し遠回りだけど、私はこの土手を歩くのが好きだった。
土手沿いには、近くの男子校のグラウンド。
サッカー部と陸上部の男の子たちがキラキラと輝いてる。
その中でひときわ輝いていたのが彼…。
陸上部唯一のポールジャンパー…。
サラサラの茶色い髪が風になびいて、キラキラの瞳が一点をじっと見据えながら走り出す。
抱えたポールが力強く地面に突かれると、勢い良く空に舞い上がるその姿…
5m以上も高い場所にあるバーを越える瞬間のしなやかな体の動きに胸がドキッとした…。
綺麗…
思わず足を止めて土手に腰掛けて西陽に時折重なる彼の影を見つめていた。
どれほどそうしていたんだろう…。
気づけば、あんなにたくさんいたサッカー部の男の子や、コースを走っていた人たちの姿が消えて
目の前のグランドには空高く舞い上がる彼だけが私の視界を占領する。
今この瞬間、この世界には私と彼だけが存在しているかのよう…。
私は夢中で彼の姿を見つめていた。
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