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「美月おはよ」
朝の教室でぽーっとしてる私の肩を叩くのは、親友の真鍋美紀(まなべみき)。
柔らかボブにパッチリした瞳、少し厚めの唇がやけにセクシーな美紀は、いわゆるモテ女子。
それに比べて私はミディアムストレートに少しだけオレンジを入れてはいるけど、口下手なせいかイマイチ男の子から誘われる事もなかったり…。
美紀みたいに明るくて人懐っこかったら少しは変わるのかもしれないけど…
そうは思っても、なかなか自分からアピールするのは苦手…。
「ね、今日さ、美月の家遊びに行っていい?」
「うん、いいよ。
でも突然どうしたの?」
ニカッと笑った美紀が、少しだけ顔を赤らめて言う。
「美月の家の近所に高梨高校のグランドあるっしょ?」
その言葉に、ドキっとして思わず狼狽える。
昨日の雨の中…
突然奪われたキスの後、彼の言った衝撃的な言葉…。
それにショックを受けた私は彼を突き飛ばしてプレハブから飛び出して逃げ帰ってしまった…。
「そこにちょっと気になってる男の子がいるみたいだから見に行きたいの」
「へ…へぇ…サッカー部の人?」
「ううん、陸上部」
「そ…そうなんだ…」
やっぱり少し頬を赤らめてる美紀はたぶんその人が好きなのかな?
そう思っていたら美紀が、衝撃的な言葉を言った。
「うん、向井一輝(むかいかずき)くんって言うの。
棒高跳びやってる人」
「えっ…?」
「あ、知ってる?棒高跳びやってるの向井くんだけだって言ってたから美月も見た事あるかもね」
…昨日の彼…
向井一輝くんって言うんだ…
私の唇を突然奪った人は…
親友の美紀の思い人…。
一気に動揺し出した私の心…
隣で楽しそうに向井くんと出会った駅での話をする美紀を見つめながら私の心は大きく揺れていた。
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