愛しさと悲しみと

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「美月ちゃん手つきが慣れてるわねぇ。 偉いわ、普段からお母さんのお手伝いしてるのね」 朔也のお母さんと一緒にキッチンに立っていると 野菜を刻む私の手の元を見て朔也のお母さんが褒めてくれるのがなんだかすごく嬉しかった。 「おばさんも本当はもう一人女の子が欲しかったんだけどねー…」 なんとなく寂しそうに言うお母さん。 「でも美月ちゃんが朔也のお嫁さんに来てくれたら念願の娘が出来るんだからいいかー」 明るく笑うお母さんに私もそうなれたらいいなと思いながら笑った。 朔也のお母さんの得意料理だというカルボナーラと、朔也が大好きな唐揚げ、 私が作った野菜サラダ、それと朔也のお母さんが作り方を教えてくれたビシソワーズ。 忙しいうちのママが作ってくれた事のない料理に感激した。 「朔也、今日は残念だったけどお前にはまだ来年もある。 それに努力を続けていれば必ず報われる時が来るはずだ。 これからもどんな事でも諦めずに続けて行け」 優しく微笑みながら言うお父さんの言葉に、朔也も頷いてる。 「それとお前の大切な美月ちゃんを、しっかり守れる男になれよ」 「あったり前だろ?」 「美月ちゃん、もし朔也が美月ちゃんの嫌がる事なんかしたら いつでもおばさんに言ってね。 確実に朔也には晩御飯抜きの罰を与えてやるわ!」 ニコニコと微笑む朔也の両親に私も笑って頷いた。 やっぱり… この人たちは決して悪い人なんかじゃないって思った…。 明るくていつも笑ってるお母さん。 優しくて穏やかで心の大きなお父さん。 向井くんのお母さんと朔也のお父さんは… きっと深い事情があってこういう人生を選んだはずだ。 それに… 朔也のお父さんは… きっと朔也と同じくらい向井くんを愛してる。 私はそう確信した。 だって… 朔也の家のリビングには… 朔也と向井くんが仲良く並んだ写真がいくつも飾ってあったから…。
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