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めまぐるしく私に変化を与えた夏も終わり
季節は秋からすっかり冬へと変わって行く。
バイト代もだいぶ貯まって、そろそろ免許を取ろうかなって思い始めてたある日の事だった。
お昼休みにお弁当を突きながらため息を吐いたあと美紀が言い出した。
「ねぇ、美月…
私ね…一輝くんと別れようと思ってるんだ」
突然美紀から言われた言葉に思わず目を見開いてしまった。
「…なんで?」
「…うん…
やっぱりね…一輝くんの心の中には誰か違う人がいる気がする」
じっと私を見つめて言う美紀に、視線が逸らせなかった。
「…私を抱いてる時ですら…
心の中で違う誰かを抱いてるって思ったんだよね…」
寂しそうに言う美紀に、私は言葉が見つからず黙り込んでしまった。
「一輝くんは私を好きになろうって努力してくれてるのは解るんだけど…
やっぱりそれっておかしいって思うんだよね。
もちろん私は一輝くんが好きだけど…
好きだからこそ…
なんかもう解放してあげようかなって思った」
「…そっか…
美紀がそうしたいなら私は何も言えない…」
「うん、だからもう一緒にグランド行けないけど…
アンタは朔也くんと、うまくやりなさいよ!」
「うん…」
ニカっと笑った美紀に私も作り笑いで微笑む。
向井くんの心の中に居座る人が私なのかは解らない。
だけど、私の中はもう朔也でいっぱいで…
どこにも向井くんの居場所はなかった。
「まぁ3年の笠原先輩からこないだ告られたからさー。
一輝くんには敵わないけど、まぁまぁイケメンだし付き合ってみるかなー」
大きく伸びながら言う美紀に苦笑いした。
「でもそろそろ進路も決めなきゃね…
美月はどうするの?
大学進学するの?」
「…うん…まだ悩んでる…」
私と美紀が通うこの中央高校は、共学だけど意外と進学率の高い学校で、2年の2学期後半にはもう進路指導がある。
この進路指導の内容によって3年のクラス編成が決まってしまうので、ある意味人生の選択をする時期となる。
だけど、昨日配られた進路希望をかき込む紙に、私はまだ何も書けないまま悩んでいた。
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