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バイトを終えた帰り道、迎えに来てくれた朔也と公園のベンチに腰かけて聞いてみた。
「ねぇ朔也はさ…高校卒業したら進路どうするの?」
「んー…ぶっちゃけ美月には話すけど…
一応サッカーの方で声は掛けられてるんだけどね…
一生それで食って行くのは厳しいからさ…
大学に行こうって思ってるよ」
「そっか…朔也にはプロサッカーって道もあるんだ…」
「うん…でもたぶんプロにはならないと思う」
「どうして?」
不思議に思って聞き返した私に朔也はニコっと微笑んだ。
「だってプロになるなら、地方に行かなきゃならなくなるだろ?
そしたら美月と離れて暮らさなきゃならないから」
…なんだか私の存在のせいで朔也が進路を変えようとしてる気がして私は焦って言った。
「も…もしもだけど…」
「うん?」
「朔也がプロになりたいんだったら…
私の事なんか優先に考えちゃダメだよ!
私はもし朔也と離ればなれに暮らさなきゃならなくなったとしても気持ち変わらないからっ!」
プルプルと揺れながら言った私に、朔也はププッと吹き出した。
「美月、俺、一言もプロになりたいなんて言ってないだろ?
それにな、俺が一番好きなのはサッカーじゃない。
前にも美月に言ったけど、一番好きなのはバイクだから」
「あっ…そうか…」
「うん、だから大学で設計を勉強して、バイクメーカーのエンジンとかの設計士になりたいなって思ってたりするんだよね」
…自分の将来をきちんと見据えてる朔也に私は驚いた。
それに比べて私は…
まだ自分の将来をちゃんと見据えてない…。
「美月は将来どうしたいか決めてるの?」
朔也に聞かれて私は黙ったまま首を横に振った。
「そっか…
でも美月はいつか俺の奥さんになるんだぞ?
それは絶対だから。
拒否権は与えないよ?」
笑って言う朔也に私はドキドキしながら頷いた。
「まぁそれまでは美月がやりたい事を思いっきりしたらいいさ」
ポンポンと私の頭を撫でてくれる優しい手に私はニコリと微笑んだ。
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