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顔も知らないパパからの手紙を読みながら、私の頬にはポロポロと涙が伝った。
「ママっ…パパの写真ってウチにはないの?」
「見たいのか?」
「うんっ」
「…惚れるなよ、おぬし…」
笑いながら言ったママが再び自分の部屋から皮の表紙のアルバムを持って来た。
初めて見たその皮の表紙をめくると、和紙の表紙に書かれていたのは
『 真田省吾
藍田笙子
美月』
私達家族3人の名前。
ドキドキしながらその和紙をめくってみた。
そこには、椅子に腰かけて赤ちゃんの私を抱っこするママと、
その脇で、にこやかに微笑んで立つパパの姿。
少し茶色に染まったサラサラの髪、キラキラと輝いた曇りのない瞳。
スラリと高い身長に、どことなく神秘的な雰囲気のパパは…
…向井くんに驚くほど良く似ていた…。
「ママ…私のパパってすごく素敵な人だったんだね」
涙を拭きながら言った私にすっかり警戒の目を向けたママが言った。
「…だから惚れるなと言ったであろう!」
笑いながらそのアルバムを閉じる。
私のパパの人生は…私の誇りになった。
遠く日本を離れ、家族とも離れて…
それでもたくさんの命を守るために必死に生きて来たパパ。
私は…自分のやりたい事がやっと見つかった気がした。
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