愛しさと悲しみと

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滑り込んで来た電車にみんなで乗り込んでから、再び反対のホームにいた二人に視線を送ると 相変わらず私達の存在に気付かないくらい向井くんしか見てない美紀に思わずクスっと笑った。 が… 向井くんの視線がじっと朔也に向けられて留まってる…。 その瞳は、あのインターハイの日にスタンド席から朔也に向けられていたのと同じ鋭い視線。 その鋭さに思わず私は慌てて視線を逸らした。 「あ、一輝が気づいたみたい」 朔也が笑ってVサインを向井くんに送ると、向井くんはフフッと笑ってVサインを返した。 向井くんの行動でようやく私達の存在に気付いた美紀が、嬉しそうに私に向かって手を振る。 動き出した電車の窓から私も美紀に笑って手を振り返した。 「一輝と美紀ちゃん、うまく行くといいな」 ドアに寄りかかりながら言う朔也に私も頷きながらも、さっきの向井くんの鋭い視線が気になる。 なんで向井くんはあんなに厳しい目で朔也を見るんだろう…? あの日向井くんが私に言った言葉。 『朔也は俺の唯一の理解者』 だから朔也から私を奪うなんて出来ないと言っていた。 その思いは私にも解る。 私も美紀が大切な友達だから… 美紀には幸せになって欲しいと思う。 だけど何故か向井くんが朔也に向けるあの鋭い視線には、もっと深い何かがあるような気がしてならなかった。
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