634人が本棚に入れています
本棚に追加
その翌日、私は土手から朔也の練習を見つめていた。
昼休みに朔也からメールが届いて今日は話したい事があるからグランドに寄ってくれと言われていたから。
「もうちょっとで終わるから待っててな」
ポンポンと私の頭を撫でる朔也に微笑んで頷く。
昨日の朔也と向井くんの公園での会話を聞いてしまった私は向井くんを見る事が出来ずにずっと視線を逸らしていた。
心なしか朔也も向井くんと目を合わせてないような気がする…。
やっと練習を終わった朔也が、土手を駆け上がって来た。
「美月!お待たせ!」
普段と変わらず人懐っこくて優しい笑顔の朔也に少しホッとする。
「じゃ、帰ろうか」
すっと差し出された朔也の手を握って土手を歩き出す。
「なぁ美月…今日少し帰りが遅くなっても大丈夫?」
私を覗き込んで来た朔也に戸惑いながらも頷いた。
「今日は…ママ夜勤でいないから…」
「そっか…じゃあちょっと美月の家に寄ってってもいいか?」
「うんいいよ」
今日はあの公園を素通りして私の家に向かう。
リビングでソファーに腰かけた朔也にココアを入れて私も隣に腰かけた。
「朔也…?」
黙ったまま何か考えてる朔也に声をかける。
「昨日さ…
一輝から何を相談されたの?」
やっぱりなと思ったけど私は何も言えずに黙り込む。
「美月のお母さんが言ったのは、全部美月を守ろうとしてついた嘘だってすぐ解ったんだ。
本当は、一輝が美月に会いに来たんだろ?」
じっと私を見つめて聞いて来た朔也に私は黙って頷いた。
「美月さ…俺には話せない内容なのか?」
…言えるはずがない…
私はただ黙って俯いた…。
「相談されたのってさ…
一輝の…父親の事…なんだろ?」
朔也の口から吐き出された言葉に私は驚いて顔を上げた。
「美月は…
一輝の父親が誰なのか知ってるの?」
やっぱり何も答える事が出来ない私を見つめて朔也がため息を吐いた。
最初のコメントを投稿しよう!