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「孝彦がね…
亡くなる前に言ってくれた言葉があってね…
その言葉だけでおばさんは報われた気がしたのよ」
お父さんの遺影を見つめながら微笑むお母さんに朔也が聞いた。
「親父、何て言ったの?」
ニコっと笑ったお母さんは、もう一度向井くんを見つめて言った。
「俺の息子の一輝まで一緒に愛してくれてありがとう。
君と家族になれて本当に良かったって言ってくれたの。
最後に孝彦は本当の事を打ち明けてくれた。
だからおばさんはもうそれだけで十分幸せだったって思えたわ。
一輝くんのお母さんにも心から感謝してるの。
こんな近所に住んでるのに…
本当だったらうちの家庭を壊す事だって出来たはずなのに…
何も言わずにずっと私達家族を見守ってくれた…」
「…おばさん…」
涙を溢れさせる向井くんに私は黙ってハンカチを渡してあげた。
受け取ったハンカチで涙を拭いてる向井くんを、お母さんは愛しそうに見つめてる。
「一輝くん…今まで本当にありがとう。
それに…
生れて来てくれてありがとう。
一輝くんも自分の夢を実現出来るようにこれからも頑張るのよ?
あなたならきっとその夢を叶える事が出来ると思うわ。
おばさんもずっとあなたのお母さんと一緒に一輝くんを応援してるからね」
泣いてる向井くんの震える肩に朔也がすっと手を回した。
「…兄貴…ありがとう」
朔也の言葉に顔を上げた向井くんは、涙を溢れさせながらも恥ずかしそうに笑っていた…。
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