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年の瀬迫った12月30日。
高校サッカー選手権が開幕した。
インターハイよりも注目度の高いこの大会はローカル局でほぼ全試合が放送される。
テレビの画面には、私の作ったお守りを胸に下げて試合に臨む朔也の姿。
お父さんが亡くなってもついに朔也は私の前で涙を見せる事はなかった。
それはきっとこの大会を目前に控えてたから…
朔也なりの決意だったんだと思う。
去年の夏に出会った頃よりも、確実に成長してる朔也は、なんだかもうすっかり大人の男って感じ。
「朔也殿はここ何ヵ月で素晴らしく成長されたのう」
画面を見ながら呟くママに私は微笑んだ。
「だって朔也だもん」
期待を裏切らない朔也のチームは順調に勝ち進んで準決勝で再び夏に敗れた強豪校と対戦した。
前半15分、コーナーキックからのチャンスを無駄にしない朔也のチームが先制点をあげる。
夏の時は、劣勢だったけど今日の試合は互角だと感じた。
このまま行ければ勝てそうな気がする…。
…だけど現実はやっぱり厳しい。
後半で追いつかれ、再びPKへと持ち越された…。
画面に映るのは、気合を入れるため自分の頬をバシバシと叩くケーシーの姿。
夏にPKで敗北してから、ケーシーも必死に練習を積み重ねて来た。
積み重ねた努力は報われる…。
祈りながら私は画面をじっと見つめた。
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