夢に向かって

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「卒業してもずっと友達でいようね」 東北の芸大に進む美紀とも4月からは離ればなれになってしまうけれど、そう言ってくれた美紀と泣きながら抱き合った。 「美月、お待たせー」 自分の卒業式を終えた朔也が学校まで迎えに来てくれた。 地元でもすでに有名人の朔也の登場に、うちの学校の女子が黄色い声を上げる。 「藍田さん! 岡田くんと知り合いなのっ?!」 在学中の3年間、ほとんど喋った事もなかった子に聞かれて私は苦笑い。 「知り合いなんてもんじゃないの。 美月は俺の婚約者だから」 堂々と宣言する朔也に、美紀は大爆笑してるし…。 …まぁもう卒業だからいいけど…。 「じゃあ美紀ちゃん、またいつか会える日まで元気でね。 デザイナーの夢、実現出来るように頑張って」 「ありがとう。朔也くんもサッカー頑張ってね! 美月の事、頼むわよ!」 「もちろんだよ。 10年後の俺達の結婚式はスピーチよろしくね」 笑い合って美紀と朔也くんも握手を交わした。 美紀と別れて、差し出してくれた朔也の手を握って学校を出る。 「今日はウチの母さんがどうしても美月連れて来いってうるさいからさ。 母上様には申し訳ないけど、今日は俺んちでお祝いさせて」 「うん!うちのママなら大丈夫。 今週いっぱい夜勤だから。 朔也と二人で卒業祝いしなされって言ってたし」 「そっか! なんかウチの母さん、張り切って料理作っておくって言ってたよ」 「ホント? 朔也のお母さんの料理はどれも美味しいからすっごい楽しみ!」 一度私の家に戻って着替えてから再び朔也と駅に向かう。 「この土手歩くのもこれが最後かもなー…」 グランドを見下ろしながら朔也が言った。 何だかそれが無性に寂しさを感じさせて私は笑ってあの頃の話をする。 「朔也と初めて会った時は、ブンブン握手はされるし、強引にアドレス交換させられたし… 正直、朔也ってヘンな人?って思ったなー」 「えっ?マジで? じゃ美月はそのヘンな人に恋しちゃったヘンな女だったんだ」 笑い合いながら、電車を降りて朔也の家に向かって歩いて行った。
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