夢に向かって

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朔也の家の手前に来た時、朔也が立ち止まって 「ちょっと待ってて、一輝にも用があるから」 そう言って向井くんの家の呼び鈴を押した。 開いたドアから向井くんがヒョコっと顔を出す。 「よぉ一輝。 ウチの母さんが卒業祝いしたいから一輝も呼んで来いってさ」 朔也の言葉に向井くんも私も思わず目を見開いてしまった。 「…おばさんがそう言ったの?」 「ああ、一輝んちのおばさん、今日も仕事忙しいんだろ?」 「…まぁ…帰れるのは夜中だって言ってたけど…」 「だったらウチで晩飯食えばいいじゃん。 母さんが美月と一輝を絶対連れて来いってうるさいんだよ」 しばし戸惑った向井くんは私をチラっと見てから言った。 「…解った…じゃ支度してから行くよ」 「うん、絶対来いよ」 通りで待ってた私の手を引いて再び朔也は歩き出す。 「…お母さんが向井くん呼んでるの?」 朔也を見上げながら問いかけた私をじっと見つめた朔也が言った。 「母さんもさ…気付いてたんだって。 一輝とうちの親父の事。 だけど一輝のお袋さんの事も恨んでないし一輝の事も、もう一人の息子だって思ってたみたい。 今までずっと一輝と一輝のお袋さんが、うちの家庭を守るために黙ってくれてた事に感謝してるって言ってたよ。 …だから一輝が九州に行っちゃう前に、ありがとうって言いたいんだってさ」 「…そっか…」 「美月が知ってる事も話しておいたからさ… たぶん今日、母さんが一輝に言うだろうけど… 黙って見ててやって」 笑いながら言う朔也に私も微笑んで頷いた。 向井くん…涙もろいから心配だな。 ちゃんとハンカチ用意してくればいいけど…。 そう思いながら私はクスっと笑った。
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