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「7月20日の…朔也の命日の日にさ…
実は俺、大学まで君を探しに行ったんだ…。
たぶん君は朔也のお墓に来ないだろうって思ってたから。
そしたら君があのメガネ男子に手を引かれて大学から出て来るのを見て…
君はまるで…
初めて君をあの土手で見つけた時みたいなうつろな目をしてた。
自分はこの世に存在してちゃいけないんじゃないかって思ってた頃の君と同じ目だった。
だから本当は、あの時そのまま君をさらってやろうかって思ったけど…
あのメガネ男子が君を見つめてる目を見たらそれが出来なかった」
「えっ…?」
不思議そうに見上げた私を、目を細めて見つめた向井くんが言った。
「…あのメガネ男子も同じなんだなって思ったから。
あの人も…
もう一度君に笑って欲しかったんだと思う」
…何も言葉が見つからなかった。
大野先輩がそんな風に私を見てたなんて…。
ただ…私は大野先輩のお気に入りの人形なんだと思ってたのに。
「だからさ…
あの人とも、きちんと向き合って。
俺が君を迎えに行けるのは、お互いの夢が叶った時だから、それまでは離ればなれで生きなきゃならない。
君が泣いてる時は涙を拭いてやるし、
君が迷ったら精一杯照らしてあげたいって思ってる。
だけど…
君が選んだ道ならば、
たとえそれが一生別々の道だったとしても俺は照らし続けるから…」
「…向井くん…」
「…なんて実はちょっと強がり言ってるんだけどさ。
ホントは、あのメガネ男子よりも俺を選んでくれって願ってる」
少しハニカミながら言う向井くんに思わず笑みがこぼれる。
「…向井くん…私は…」
「うん?」
「朔也と同じくらい向井くんを愛してるよ…?
…もうずっと前からね…」
私の言葉に一瞬、瞳をゆらゆらと揺らした向井くんは、私を抱き寄せて小さく囁いた。
「…だと思ってた」
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