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「先輩…私ね…
私を照らしてくれる太陽は失ってしまったけど…
暗闇を照らしてくれる月を見つけたの。
ううん…
その月はもうずっと前から私を照らしてくれてたんだけど…
太陽の明るさで気づいてなかっただけで…
最初から月も私の空にずっとあったんだよね…」
左手のリングをじっと見つめる私を抱きしめたまま黙ってる先輩に私は言葉を繋げる。
「月の存在に気付いた時、
その空には、月だけじゃなくて…
たくさんの星があった事も知ったの…」
じっと見つめた大野先輩の瞳がゆらゆらと揺れている。
「…そっか…
美月はその月に教えてもらったんだろ?
…空には星もあるんだよって?」
微笑みながら言う大野先輩の目はとても優しくて…
私は何で今までこんなに優しく私を見つめてくれてた大野先輩に気付けなかったんだろうって思う…。
「うん…
…だから私…
その月を一生大切にしたいって思う」
しばし沈黙した大野先輩がはーっとため息を吐き出す。
「その月は、なかなか勘のいいヤツなんだね。
そうだよ、僕は朔也を失ってからの美月をずっと見て来た…
だから、美月がリストバンドをつけ始めた時にすぐに気づいた。
…リスカ始めたなってね。
それでも僕が何を言っても美月は聞いてくれないだろうなって思ってたし。
…だって美月は僕が大嫌いだったでしょ?」
「うん」
素直に頷いた私に大野先輩はハハハって笑ってる。
「だから美月がリスカしたくなるような一人ぼっちの時間を作らない為には…
壊れてた美月の心に付け込んだような近寄り方しか出来ないって思った。
本当は美月を抱いたりなんてするつもりは最初はなかったよ。
だけど…
一緒にいたら僕は錯覚するようになったんだよね。
もしかしたら僕が美月を照らす月になってあげれるんじゃないかって。
…僕に抱かれる事で、美月の女の本能が僕を求めてくれるようになるんじゃないかってさ。
…そんな事でしか美月を繋いでおけない自分が情けないなって思うけどね」
フフッって笑った先輩の瞳が悲しそうに私を見つめる…。
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