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◇参◇
三ヶ月前、
鍋島直機は憂鬱だった。
はじめは
期待に胸膨らませた
高校生活も、
五月に入ると
すっかりその新鮮味は
失われていた。
新生活はそれ単体では
何も変えてくれなかったのだ。
中学の同級生のうち
何名かは、
春休みの間に
驚くほどの変貌を遂げていた。
ある者は金色に髪を染め、
ある者は耳に特大のピアスを
ぶら下げて
というように。
直機は彼らを見て、
自分が三年に一度の貴重な
機会を逸したことを知った。
しかし、それにしても――
「こんな退屈な日が
続くくらいなら、せめて……」
部活にでも入っておくべきたった、
と直機は思った。
入学時のしつこいくらいの勧誘が
嘘だったかのように、
先輩たちは
寄って来なくなっていた。
押されている間は
引いてしまい、
気がつけば
「ぼっち」になって
しまうのは、
部活にかぎらず
友達づくりでも、恋愛でも
同じことだった。
意を決し、
「飛び込む」機会を失って、
後は、
中学時代と同じように
無限に同じ一週間がループする
毎日を送るだけ
……かと思われた。
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