6人が本棚に入れています
本棚に追加
(見つけたか?)
少女は垂直に近い角度で
雲間を駆け抜けて、
速度はどんどん上げながら
高度をぐんぐん落としていく。
綿のように柔らかかった雲が、
少女の周りを360度、
ちぎれんばかりに
後ろに引っ張られて
集中線を描く。
10秒ほどで、雲を抜けると、
一面に海原が広がっていた。
少女は機体を
少しだけ水平に戻す。
そして、前のめりに
コックピットに身体を預け、
ガチャッ
少女は銃を構えた。
引き金を引けば
空気を張り裂くような
音とともに、
直径10ミリの弾丸が
絶え間なく飛び出すだろう。
ヒトの命を奪うものだ。
ハァッ、ハァッ……。
押し殺すような少女の
息遣いとともに、
引き金の重さや
鋼鉄か血かわからない
あの独特な匂いでさえも、
画面の向こう側から
伝わってくる気がした。
速度はマッハ0.8。
高度は海抜1,000メートル。
銃を構えて飛行する
少女の腰では、
プリーツスカートが
相変わらずせわしなく
はためいていた。
最初のコメントを投稿しよう!