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◇壱◇
地平線の裏側に控えた太陽が
東の空を少しずつピンクに
染める頃、
また一人、また一人と、
少女たちは飛び立って行った。
鉄の棺にまたがって。
飛び立った子らの中には
この艦に無事還れない子も
出てしまうかもしれない。
それさえも少女らが
その小さな背中に初めから
背負った運命なのだろうか。
鍋島直機(なべしま・なおき)
が最後の一小隊を見送ると、
時刻は朝の
ゼロゴーフタマル。
太陽はすっかり顔を出し、
水平線と殆ど平行な角度で
少女たちの一世一代の
晴れ舞台を照らしていた。
少女たちの飛び立ったあとの
甲板には、
何も残っていなかったが、
不思議なことに、
波の音に混じって
あのけたたましいエンジン音が
まだ聞こえている気がした。
(絶対、みんな
生きて帰ってこいよ!
待ってるからな)
強くそう祈った後、
直機は艦橋に向かった。
祈る以外に自分ができることを
やるために――
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