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その遊園地は横浜にあった。
品川の家から行くとなると、電車で15~20分。
さらに駅前の繁華街を通り抜け、坂を登り、20分ぐらいは歩かなければいけない。
子どもの足では‥‥あちこち覗きながら行くものだから、1時間はたっぷりかかった。
だが、優正(まさただ)は一時、子ども達を連れてよくそこへ行った。
「どこへ行きたい?」
と尋ねれば、3人の子ども達は口をそろえて、
「横浜の遊園地!」
と言う。
恵美(めぐみ)を頭に、誠一(せいいち)、康介(こうすけ)と続く。
色々な時期があったけれど、眼に浮かぶのはみんな幼い面差しの小学生である。
遊園地という呼びかたは、あまり正確ではないかもしれない。
もっとずっと大きく、立派な動物園があり、公園がある。
ブランコやジャングルジムを置いた遊び場があり、しかもどこへ行っても無料。
ジェットコースターやコーヒーカップなど、お金のかかる乗り物は用意していなかった。
始めは妻の涼子(りょうこ)も一緒で……
つまり、家族全員で遊びに行ったのだろうが、その記憶はあまりはっきりと残っていない。
顔ぶれは……やはり、ほとんど自分と3人の子供達である。
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