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優正は遊園地を出て繁華街へ足を向けた。
多少の心配はあったが、普段だって親の眼の届かないところで遊んでいるのだから、特に今日だけ気に病む理由もない。
優正にとっても週に一度の休日である。
気晴らしが欲しかった。
だんだんと街が賑わってくる。パチンコ屋へ入り、古本屋を覗いた。
ジャズの流れる喫茶店へ入り、コーヒーをゆっくりと飲む。
駅の反対側へ抜け、裏通りに入ると“クレオパトラ”だの“プリティ・ベティ”だのと看板を掲げたいわゆる『悪所』があり、休日だからか昼間から営業していた。
場にそぐわないワンピースの若い女が優正の前を歩いて行く。
薄い布地の下で、いかにもバネのありそうな身体が弾んでいる。
女は角を曲がり、優正が後を追って曲がると、もう女の姿は無かった。
どこかの店へ入ったのだろうか、なんとなく白昼夢を見ているような不思議な感じだった。
そう──
一度だけ、そんな店に入ったことがある──。
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