the winding family

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「いらっしゃいませ。ご指名は?」 「誰でもいい。感じのいい子。いないかな」 「はい…じゃぁアオイさん」 この店の女性は、どうやら“色”の名前がつけられているらしい── 「アオイ以外の名前は何があるの?」 細い階段を昇りながら、アオイと呼ばれるその相方に尋ねた。 「アオイにアカネ、キコ、ミドリ、シオン、モモコ‥‥」 「アカやアオなんてのは、やっぱり人気の美人につけるのかなぁ」 「そんなことないみたい。順番で。空いてる名前があるとそれになるのよ」 女はたんたんと応える。とりわけ美人ではないが、肌が白く、素朴な感じだ。 「何時からやってんの」 「早番は2時から。お客さん初めてですか」 「あぁ‥」 ベッドのある浴室。 優正が裸になり、女も裸になった。 細い身体だが、胸は不自然に膨らんでいる。 ──子ども達はどうしているかな── 今ごろは動物園から公園に移ってモルモットを抱いている頃だろう。 ──涼子はどうしているかな── 妻はあまり身体の丈夫なほうではない。病気のときは眠るのが一番だ。 ぐっすり眠っているに違いない。 子ども達を連れ出してやったのは、ささやかながら女房へのサービスにもなろう‥‥。 ──しかし、こんなことやってちゃなぁ‥‥── もちろんやましさはあるが、世の男は皆こんなものだ。 家庭を壊すほどのめり込む事もないし、勇気もない。 そう…ほんの気晴らし‥‥。
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