1214人が本棚に入れています
本棚に追加
「……グッ……ゴホッ、ゴホッ……!」
突然、男性が横たわったままの体勢で激しく咳き込み、そして吐血した。
「……!」
ダメ……。
このままじゃこの人が死んでしまう……!
気づけば私はその男性に再生の術を使っていた。
この術は人のエルギー(生命力)を吸収し私の体内で一時的に育てる。
そして再生力を倍速させた後、相手の体内にそれを送り込むという仕組みだ。
本当は死体から集めなくても良いんだけど。
でもその場合、戦闘で沢山の人の肉体を再生させるのは無理がある。
だからエバト様は死体から全部生命力をいただけって私に提案してきたんだ……。
だけど私は内緒で少し残している。
何故なら生命力を全て吸いとった死体は魂自体が消滅してしまうから。
つまり来世がなくなる。
生まれ変われなくなってしまう。
「……少し気分が悪くなるかもしれませんが我慢してくださいね?」
私は男性の損失した部位に自分の手を当てる。
「えっ……」
男性は驚きの表情。
「……ごめんなさい、じっとしていてください。私、あなたを助けたいんです」
「だがっ……。私を……助ければ…君は……」
「……」
私はその問いには答えなかった。
自分でも分かっているから。
これは裏切りだ。
この事がバレたら私はどうなる?
そう思うと手が無意識の内に震えていた……。
最初のコメントを投稿しよう!