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どのくらい走ったのだろう?
気がつけばエバト様はおろか、もう私の所属軍ですら見当たらない。
は、早く戻らないと。
もしくはどこかの別の軍隊と合流……。
一応腰にさした剣はあるものの、私には上手に使いこなす技能がない。
人を剣で刺したことすらないのに。
そんな私が戦って勝てるほど戦争は甘くない。
――危険すぎる。
私は改めて周囲を見渡す。
周りには沢山の木々がおおい繁っている。
隠れるのには困らないけど逆に敵兵が潜んでいる可能性もあるといえる。
どうしよう……。
怖いな。
ゆっくりと周囲を警戒しながら歩いていく。
「あれ……ネリシャ!?」
聞き覚えのある声に振り替えると、私の幼馴染みであるマナがいた。
「マナ……」
彼女は背中に長い剣を背負っている。
黒髪のポニーテールにスラッとした長身。
彼女とは昔、よく二人で花を摘んだりして遊んだ仲だ。
でも今はマナは戦場で命を落とさないために稽古に夢中。
会う時間もなく、話すことも少なくなってきた。
マナは私とは異なり近接攻撃部隊なんだ。
「ねえ、ネリシャ。あなた……なんで一人なの?」
マナのぱっちりとした瞳が私をとらえる。
「それは……」
「まったく。あの筋肉バカは部下の面倒もろくにみれないときた。しかも君は癒しのスペシャリストだというのに。損失すれば確実に我が軍の痛手だぞ」
マナの後方から近付いてきたのは彼女の部隊の指揮官、リジン様だ。
私はこの人の事はよく知らない。
だけどホッとした。
仲間の軍に合流できたから。
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